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AVセットアップの更新: KEF LS50 Meta + KEF KC62 + Yamaha RX-A2A

2021年にAVセットアップを更新し、ささやかな2.1chのホームシアターを構成したので、その設定などを記録しておく。

背景

従来のセットアップはBose 301Vと、Sony STR-DN1040だった。301Vはエンクロージャーのサイズの割に大きなウーファーを備えており、ゲームと相性がよかった。

長年使っていた301Vの音は気に入っていたが、どこかの時点で更新が必要になると考えていた。301Vは低品質な音源でもうまく(ボーズの音として)鳴らすようなスピーカーだったが、近代的な高音質のゲームサウンドを忠実に再生する能力には欠けていた。

MacのスピーカーをクリプトンKS-11に更新したことも影響している。KS-11はBose M2 (Computer MusicMonitor) と比較すると明らかに透き通った音で、ボーズのスピーカーが中高域に低域が重なっているように聴こえる傾向に気づいてしまった。ボースの音は悪くないが、明瞭さに欠ける。

最終的に、セットアップを更新する後押しになったのは、最近になって始めたFF14の楽曲が気に入ったのと、リリースを控えていたPSO2NGSに備えるためだった。

選定の比重はゲームと映画が50%、オーディオが50%だが、実際の使用時間はゲームが大半である。

構成

  • KEF LS50 Meta (フロントスピーカー)
  • KEF KC62 (サブウーファー)
  • Yamaha RX-A2A (AVレシーバー)

従来のセットアップはフロントスピーカーのみの2ch構成で、今回のリニューアルでも当初は2ch構成を踏襲するつもりだった。しかしLS50 MetaとRX-A2Aを購入してから映画を視聴する機会が増え、サブウーファーがあれば小型のブックシェルフスピーカーでは出せない低域の出力を伸ばせると思うようになったため、KC62を追加して2.1chにアップグレードした。

さらにスピーカーのチャンネル数を増やすかどうかも検討したが、最終的に見送った。AVRを2chで使用するユーザーはかなり少数派のため、フロントスピーカーとサブウーファーにこれだけ偏重したセットアップは珍しいかもしれない。しかしフロントスピーカーにLS50 Metaを使ってしまうと、半端なリアスピーカーの増設は考えにくくなった。シネマDSPでも十分に音場の広がりが感じられており、妥協したサラウンド環境を構築してもコストの割に体験の質が期待ほどには変わらないリスクも想定された。

KEF LS50 Meta

KEFはUni-Qと呼ばれる同軸ドライバーの技術を、数百万するハイエンドスピーカーから数万円のローエンドまで一貫して展開している(同一のユニットを搭載している訳ではない)。Uni-Qの歴史は長く、LS50 Metaには12世代のUni-Qが搭載されている。音は明瞭で聴き疲れしにくく、深い低音が出る。

KEF KC62

KC62はサブウーファーとしてはかなり小さい。およそ25cmの立方体で、これだけコンパクトなサブウーファーは候補を探すのすら難しく、KC62と競合できる製品はなかった。サッカーボールほどの大きさしかないが、重量は14kgもあって非常に重い。値段も高い。もちろん、巨大なサブウーファーを設置するスペースを用意できる場合は、同じ値段でもっと大きな音が出る製品を購入できる。

Yamaha RX-A2A

以前のSTR-DN1040にはHD-D.C.S.という映画館の音響を再現する機能があり、非常に気に入っていたため、同様の機能を今回も要件としていた。しかしこのような機能はヤマハのシネマDSPくらいしか見当たらず、そのためヤマハ以外はほとんど検討していない。ソニーもローエンドモデルを残してAVR市場から撤退しており、候補にはならなかった。ヤマハを選ぶのであればSurround:AIに対応するRX-A4Aを導入したかったが、設置場所のスペースに収まらないためRX-A2Aで妥協した。

RX-A2Aには4K/120Hz信号が出力できない不具合があり交換対応がアナウンスされているが、交換せずに使用している。現在使用しているテレビが4K/120Hzに対応していないため実害がないのと、AVレシーバーは新しい規格に対応するため短い間隔で買い換えるということもあり、そのまま使用して問題ないと判断した。

YPAOによるキャリブレーション

アクティブサブウーファーの本体にはボリューム設定があり、AVRでキャリブレーションするだけのパッシブスピーカーのみの構成と比較して調整箇所が増えることになる。サブウーファーのボリュームが大きすぎるとキャリブレーションシステムの限界を超えてしまい、逆に小さすぎると音が出なくなるため、実際にはこの間のどこかに設定しなければならない。

KC62のマニュアルによると、レシーバーと接続する場合はLFEモードを使用し、ボリュームは中間から最適な点を探していくよう指示されている。RX-A2Aのマニュアルでも、サブウーファーの音量は半分に調節するように求められていた。クロスオーバー周波数は最大にするように書かれているが、今回の接続ではKC62をLFEモードで使用するため影響しない。

実際にYPAOで計測してみると、KC62のボリュームは12時では大きすぎるようだった。測定後のサブウーファーのレベル補正が上限の-10.0dbで提案され、エラーにはならないもののフロントスピーカーは全体のバランスを取るためにプラスに大きく補正されていた。11時や10時でも同様だった。

KC62のボリュームレンジとYPAOの補正値
  • 5 (Max): 未計測
  • 4: 未計測
  • 3: 未計測
  • 2: 未計測
  • 1: 未計測
  • 12: -10.0 db
  • 11: -10.0 db
  • 10: -6.0 db
  • 9: -2.5 db
  • 8: 検出されず
  • 7 (Min): 未計測

KC62のボリュームを9時まで下げると、測定後のサブウーファーのレベル補正は-6.0dbになった。

YPAOの結果から、この環境におけるKC62の適切なボリュームは9時のあたりと分かった。

KC62のボリューム

オーディオの一般的な話ではあるが、サブウーファーのボリュームは複数の場所で設定できるため、調整を複雑にしている。まずKC62本体のボリュームノブがあり、YPAOの計測結果で調整されるレベル補正がRX-A2Aのスピーカー設定にある。さらにオプションメニューにユーザーの好みで調節するサブウーファーのレベル補正が存在し、今回は使用していないがトーンコントロールも用意されている。

今回、YPAOの補正ではサブウーファーが-6.0dBに設定されたが、このままではマスターボリューム(再生音量)をかなり大きくしないとサブウーファーがオンにならない。一般論としては、クリッピングを回避するためにAVRのレベル補正を低く保ち、サブウーファーのゲインを高くしたほうがよい。しかしどうやらヤマハオンキヨーのAVRは、サブウーファー出力の電圧が低いらしく、レベル補正をマイナスにしたままだとサブウーファーが意図せずスタンバイになってしまう問題が起きやすい。

今回のセットアップではサブウーファーのボリュームノブはそのままに、AVRのレベル補正を0dbに戻した。これでキャリブレーションされた状態から、サブウーファーの音量は+6.0dBされたことになるが、映画やゲームではこのくらい低音をブーストするのがちょうどよかった。音楽ではRX-A2Aのオプションメニューのサブウーファーボリュームトリム(再生レベル補正)で-6.0dBしてフラットにしている。

調整後は実際にゲームをしたり音楽を聴いたりして試す。RX-A2Aのスピーカー設定のメニューにはテストトーンの項目があるが、ボリューム調整に関しては役に立たない。サブウーファーに対しては非常に小さい音しか出力されず、耳を近づけなければ再生されているのかすら分からないからだ。海外のフォーラムの情報によると、どうやらこれはヤマハのAVRでは以前の機種から存在する問題らしい。

RX-A2Aの設定

Speaker Setting (スピーカー設定)

フロントスピーカーを “Small” (小) にし、クロスオーバー周波数は80Hzとした。この設定では80Hz以下の低音域はサブウーファーから出力される。マニュアルでは、一般的なガイドラインとしてウーファーが16cm (6.1/4”) より小さいスピーカーが “Small” とされており、この基準に従うと13cmウーファーのLS50 Metaも “Small” に含まれる。

クロスオーバーの設定については、THX規格の80Hzという基準を参照したり、あるいはスピーカーの周波数応答から求める方法がある。KEF USのサイトではLS50 Metaの周波数応答(±3dB)が79Hz - 28kHzと書かれており、80Hzは良い妥協点と思われる。

今回のセットアップでは、LS50 Metaの低域の負担を軽減するため、クロスオーバーは100Hzに設定した。

Adaptive DRC(ダイナミックレンジコンプレッションの自動調節)

通常の音量ではオフ、夜間に音量を絞る場合にはオンにしている。マニュアルの説明では音量に連動してダイナミックレンジを自動調節する機能であり、オンにすると夜間に小音量でも聴きやすくなるとされている。ただし小音量の基準に関しては何も示されていない。

DRCは効果が分かりやすいため、有効にするかどうかは実際に試して決めればよい。映画の台詞が聞き取りやすくなり、ゲームであれば小さな環境音も聞こえやすくなる。これが本来の音ではないと感じるか、”adaptive” な音と感じるかは考え方に左右される。隣人の苦情を受けずに80デシベル(長時間さらされると難聴になるといわれている)を上回るような音量で再生できるオーディオマニアには必要ないかもしれない。

DRCを使うべきかどうかは、複数の異なった状況で確認すると判断しやすい。DRCをオンにすると、ダイナミックレンジの圧縮により音の空間を感じにくくなる。DRCの副作用を実感できない場合はそもそも音量が小さすぎるので、そのときはDRCをオンにしたほうが相対的にマシに聞こえると思われる。

Cinema DSP(シネマDSP

RX-A2AはSurround:AIに対応しないため、サウンドプログラムをゲームタイトルや曲によって変えている。ゲームの場合だと、PSO2NGSやFF14といったBGMが常に再生されるタイトルでは “Roleplaying Game”、そうでなければ “Action Game” を使う。

Compressed Music Enhancer(ミュージックエンハンサー)

オフにしている。英語のユーザーガイドでは”Compressed Music Enhancer”と表記されている機能で、名前からして圧縮音源向けである。ロスレスが主流となった現在では役目を失ったように思われ、実際の効果も不自然に感じた。

Extra Bass(エクストラベース)

フロントスピーカーを “Small” (小) にして、サブウーファーを使用する場合、Extra Bassはオフにしたほうがよい。海外のフォーラムに投稿されたRX-V383の計測によると、Extra Bassは20-40Hzの範囲にある低音を減少させてしまう。

おそらくExtra Bassはサブウーファーで十分な低音が出せる環境をターゲットにしておらず、想定もしていない。RX-A2Aのマニュアルでは、Extra Bassを「フロントスピーカーの大きさやサブウーファーの有無に関わらず、余裕のある低音を楽しめます」と説明しているが、ヤマハの以前の機種向けのサイトでは「元の音に含まれる倍音成分を利用して、小型スピーカーやサブウーファーなしのシステムでも低音の力感や躍動感をリアルに再現する」と紹介している。状況からすると「サブウーファーの有無に関わらず」の部分は正確さを欠いている可能性が高い。

サブウーファーがある場合、結果の予測が難しいExtra Bassを使う必要はなく、単にサブウーファーの音量を上げればよい。トーンコントロールやサブウーファーのボリュームトリム(再生レベル補正)であれば、MusicCastアプリから簡単に変更できる。

結論

全体的に、今回のセットアップは期待通りの結果が得られており、選択には満足している。どの製品も2020年後半から2020年にかけての発売であり、検討のタイミングとしても最適だった。

今回導入したKEFのスピーカーは、いずれも優れたパフォーマンスとコンパクトなサイズを両立している。それと引き換えにプレミアムな価格設定になっているが、予算の上積みでこのような選定が可能となっている状況は消費者として悪いことではない。

サブウーファーについては、音楽再生に限れば必須だとは思わない。LS50 Metaは十分に深い低音が出ているため、よほど低音が多く含まれる楽曲を除けば投資対効果は感じにくいだろう。たしかに違いはあるが、それが音楽体験の向上に大きく寄与するかどうかは個人の考え方による。

ゲームや映画では低音が不足すると物足りなさにつながるため、設置環境が許すのであればサブウーファーはあったほうがいい。今回の導入で、小型のブックシェルフとサブウーファーの組み合わせは理にかなっていると確信できた。

RX-A2AはMusicCastアプリによるスマートデバイスからの操作が非常に便利で、ファームウェアのアップデートでXbox One Xを使用する際の安定性も改善した。シネマDSPも効果的だったが、Surround:AIが搭載されていれば言うことはなかった。ユーザーから見るとヤマハのシネマDSPは競合との差別化に役立っており、Surround:AIが巨大な上位機種にしか対応していない状況には疑問がある。将来的に、RX-A2AのサイズでSurround:AIに対応するモデルが出てくれば買い換えたい。

最後の補足として、今回の情報収集は日本語の情報だけでなく、海外のレビューやフォーラムを多く参考にした。スピーカーの10万円台のセグメントは一般的な感覚からすると「高すぎる」に分類される価格帯で、レビューや実際のユーザーの情報が少ない。とくに国内ではほとんど情報のないKC62のレビューは、英語であれば参考になる複数のレビューが見つけられた。

英語の情報でも、Google翻訳やDeepLなど優れた翻訳ツールを使うことでアクセスがかなり容易になっている。このような情報収集に用いる場合、DeepLを使うなら有償版を使ったほうがストレスが少ない。海外のレビューは詳細でかなり文字数が多く、DeepLの無償版の制限である5000文字を超えることが多かった。